ISO 20022は、ハイバリュー送金システムやローバリュー送金システム(LVP)から証券や外国為替(FX)市場まで、世界の決済マーケットインフラストラクチャ(MI)の新たなメッセージング規格として移行が進められています。さらに最近では、国内および国際送金のインターオペラビリティを実現し、一貫したユーザーエクスペリエンスを提供する、世界のクロスボーダー決済のグローバルスタンダードとなっています。

SWIFTネットワークでのクロスボーダー決済およびキャッシュレポーティングにおけるISO 20022使用ガイドラインを定義するためCBPR+(Cross-Border Payments and Reporting Plus)の仕様が作成され、メッセージ内の当事者情報(支払人および受取人)をさらに強化し、より効率的なアンチ・マネーロンダリング/制裁スクリーニングが促進されています。このようなデータの包括性により、品質および能力が向上し、現在提供されるサービスの拡大が可能になります。

ISO 20022の利点を活用し、既存のレガシーMT規格が新しいMX規格に移行する上でハイレベルな複雑性が増す中、金融機関のシステムは以下の要件を満たすことを求められています。

  1. 新規CBPR+メッセージの形式、サービスおよびワークフローを採用
  2. 決済情報・送金情報を拡張し、CBPR+メッセージガイドラインをサポート
  3. 製品のリリースサイクルを新規・移行システム両方のガイドラインの更新に合わせ、ISO 20022の移行プロセスと調和
  4. 既存のMT規格との共存
  5. 3年間の共存期間(2022~2025年)を確保
  6. CBPR+に影響を受けるシステムにおいて要求される変更を再検討・評価

3年間の移行期間は、クロスボーダーのMX規格およびMT規格が共存する期間となり、この期間完了時にSWIFTは国際決済におけるMT規格を終了します。

金融機関は、この期間中、その影響を受けるシステムをCBPR+に段階的に徐々に移行、規格および関連するワークフローを実装し、受領側の移行状況に基づきメッセージの送り方を判断します。

金融機関はどのようにこれらの状況に対応し、可能な限りシームレスにISO 20022に移行するのでしょうか。

金融機関は、評価の結果や各システムのロードマップに基づき、一つまたは複数の移行アプローチを決済システムにおいて選択することができます。これらのアプローチには、以下のものがあります。

  1. アドホック移行アプローチ 受信するMXメッセージを相当する既存のMTフォーマットに変換するとともに、送信するMTメッセージを相当するMXフォーマットに変換し、要求される報告・確認メッセージをサポートします。

    メリット:既存の決済システムにおける変更を最小限またはゼロにし、ISO 20022のネイティブサポートに向けた中間段階を検討する

    デメリット: レガシーシステムの能力に合わせているため、新しいISO 2002機能を導入しても現在のシステムを強化しない

    アドホック移行アプローチ
  2. ネイティブ実装 ISO 20022のすべてのリッチネスを導入します。

    メリット: 市場やユーザーに強化されたサービスを追加的に提供する

    デメリット: レガシーシステム/変更が困難なシステムを採用するにあたり、多額の投資が必要であり、相当な時間および努力を必要とする可能性が高い

    ネイティブ実装
  3. ハイブリッドアプローチとは、CBPR+ の円滑な導入を支援する方法の一つで、金融機関はアドホックトランスレータを使用して CBPR+ メッセージのサブセットを移行し、その他のメッセージは CBPR+/ISO20022 のネイティブ実装を使用することを選択できる、というやり方です。

    この方法を用いた場合、CBPR+メッセージのどれをどのタイミングでアドホックトランスレータからネイティブの実装に展開するかについて、金融機関のシステム評価および優先順位ロードマップに従い、ご自身で決定いただくことができます。

    長所: CBPR+の迅速な導入と、期限の厳守やシステムの完全移行を必要としないこと、つまり柔軟性をもってネイティブCBPR+にアップグレードできること。併用期間中を利用して徐々にCBPR+に移行することができるため、金融機関にとっては好ましいアプローチであるといえるでしょう。

    短所: 本番環境においてアドホックとネイティブ併用してアプローチするため、システム管理者や担当者の作業の複雑化、煩雑化の可能性を考慮する必要があります。

    ハイブリッドアプローチ
  4. 中央集権化決済ハブオーケストレーター 金融機関のバックエンドシステムとSWIFTネットワークの間の仲介として機能します。上記のアプローチをサポートするだけでなく新たな追加機能も備えています。

    メリット:金融機関を決済のベストプラクティスに合わせ、CBPR+ガイドライン、リッチネスおよびアップデートのシームレスな採用を促進。他のシステムに影響を及ぼすことなく、Visa Direct、RippleおよびMastercard Sendなどの決済チャネルおよびサービスの異なる種類を使用可能にする

    デメリット: このアプローチは、企業内に複数の影響を受ける金融システム、または変更が困難なシステムがある場合に好まれる。このタイプのソリューションにかかる費用は、通常他のオプションよりも高額であるため、各システムの評価段階において費用/価値の分析の一環として検討されるべきである

    中央集権化決済ハブオーケストレーター
  5. マルチテナント・エンタープライズハブ 異なる地域における金融機関、子会社、支店や事務所において中央プラットフォームとして機能し、ローカル市場のインフラストラクチャーの規則および規定に対応する能力を有します。

    このアプローチは、金融機関がサービスを定期利用し、その統合をカスタムできる場合、中央銀行および/または中央集権化サービスによる複数の金融機関にサービスを提供し、これを運営することもできます。

    メリット: 中央集権化された決済ハブアプローチに言及された利点に加え、マルチテナント・エンタープライズハブは、複数実装間のシステムコストを共有する能力を活用し、強化されたモニタリング/レポーティング能力を持つ中央の権限を提供します。さらに新たな決済方法やアップデートの導入も加速する

    デメリット: 中央サービスプロバイダーが高いコストと運営上の努力を負担する

    マルチテナント・エンタープライズハブ

上記の移行アプローチに加え、システムは1つまたは複数のロールアウト戦略もサポートし、個別の需要や要求に対応します。これらの実装における戦略には以下のものがあります。

  1. マルチフェーズの実装:選択された機能およびメッセージのサブセットを一度にロールアウトすることができるため、この戦略は、多くの種類の決済メッセージをサポートする大型システムに有効です。
  2. シングルフェーズの実装(ビッグバン導入):このオプションは、すでにISO 20022メッセージをサポートするシステム、および/または多くの努力を必要としないCBPR+の移行に最適です。アドホックでの移行や中央集権化決済ハブの移行アプローチに最も適しています。システム評価および機関のリスク選好がこのアプローチを進める上で大きな役割を果たします。
  3. カナリアリリース:この戦略は、すべてのユーザーおよびインフラストラクチャーにロールアウトする前に、小規模なサブセットのユーザー/トラフィックへの変更をロールアウトするため、CBPR+に関連する新たな変更リスクを減らすことができます。
  4. 調和された実装:この戦略では、CBPR+システムリリースサイクルおよびロードマップは、新しいCBPR+ガイドラインのリリースおよび更新と一致していなければなりません。

ProgressSoft決済ハブ(PS-PayHub)

ProgressSoftの決済ハブは優れた本格的なモジュラープラットフォームで、すべての決済タイプに対応し、トランザクション管理の単一のオーケストラレーターとして機能します。一つの中央集権化エンタープライズプラットフォームを通じてマルチテナントの設定を提供し、様々な国・地域、関連会社やコルレス銀行において、銀行の完全な決済タイプをサポートします。さらに、モジュール化され、接続可能なPS-PayHubのアーキテクチャーのおかげで、システムは、上記のすべての導入された移行アプローチおよびロールアウト戦略をサポートすることができます。

最新のPS-PayHubプラットフォームは、Cross-Border Payments and Reporting Plus (CBPR)+対応のソリューションであり、バックエンドシステムにおける変更を最小限またはゼロにする、金融機関によるISO 20022への移行を支援します。

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