排除から包摂へ:即時決済の推進力

排除から包摂へ:即時決済の推進力

はじめに

つい最近まで、主に金融機関の営業時間に関連する特定の日や時間によって電子決済の開始、処理、確定という金融サイクルが制限され、電子マネーが受取人の口座に届くまで1、2日程かかっていました。即時決済は、このスピードや可用性といった制約を変えるものです。他の個人間電子送金と一線を画す機能として即時決済が登場しました。

即時決済の定義

即時決済は、リアルタイム決済とも呼ばれており、個人や企業が24時間365日、即時に送金できる電子決済方法です。最終受取人は、送金された資金をリアルタイムまたはほぼリアルタイムに近い状況で利用することができます。

即時決済の誕生

新型コロナウィルスの流行により、金融を含むあらゆる種類のやりとりを制限する必要性が緊急に提起され、デジタル決済や非接触型決済への移行が大きく促進されました。しかし、即時決済はそれよりも前から世界中で勢いを増していました。現在は、50カ国以上で独自の即時決済インフラが開発され、さらに2023年または近い将来に即時決済ソリューションを提供する意向を多くの国が示しています。各国が即時決済ソリューションに強い関心を寄せている背景には、いくつかの理由がありますが、金融包摂が最も主要な動機であると言えるでしょう。その理由を深く知るためには、この現象の定義と根拠を掘り下げて考えてみることが重要です。

金融包摂の必要性

金融包摂とは、個人や企業による金融機関へのアクセスを妨げる障害をなくすことです。この目標に取り組むことで、貧困削減、経済成長の拡大、所得平等の進展など、大きな利益をもたらすことができます。金融包摂の重要性は、以下のような理由によって示されています。

  • 金融サービスへのアクセスの悪さ
    従来型の銀行サービスを利用する国民が少ない発展途上国では、金融包摂への関心が大きくなっています。サービスを利用しない国民には、一般的に低所得世帯や銀行口座を持たない顧客などの貧困層が含まれます。
  • 金融政策確立の難しさ
    金融政策を確立するには、経済活動と金融行動を包括的に理解する必要があります。しかし金融排除があると全人口の実態を示せず、政策の有効性を妨げる可能性があります。
  • 貯蓄を失う可能性
    金融包摂が限定的であると、必要不可欠な金融サービスの利用ができず、効率的な資金管理を妨げることにつながり、タイムリーな財務上の意思決定が遅延する可能性があります。これらの要素が総合的に、顧客の貯蓄選択に影響を与えることになります。]
  • 資産の形成
    金融排除は、資産の形成に不可欠な金融ツールやリソースの利用を妨げるほか、従来の送金方法や銀行との取引に時間とコストが余計にかかるため、投資、資産開発、経済成長の機会が制限されます。

金融包摂における即時決済の役割

インターネットと高度な通信システムによって、銀行の金融サービスへのアクセスが大幅に向上したことは間違いありません。インターネット・バンキング、オンライン・サービス、モバイル・アプリケーションなどの技術革新は、より幅広い層を金融システムに取り込むことに大きく貢献しています。しかし、即時決済は、銀行口座を持たない顧客に前例のない機会を与えるという本来の潜在能力により、金融スキームを完全に転換する力を持ち、金融包摂を高めることが可能です。以下に、金融包摂を促進する上で極めて重要な即時決済の主要要素を挙げます。

  • アクセシビリティ
    即時決済は、携帯電話、タブレット端末、個人用ノートパソコンなど、さまざまなデバイスから利用可能であり、大きな人気を博しています。この包括性は、銀行口座を持たない個人にも金融システムへの積極的な参加を実現します。これにより、金融包摂が促進されるだけでなく、より幅広い層がシームレスな資金移動に伴うメリットを享受できるようになります。
  • スピードと利便性
    即時決済のリアルタイム処理により、ユーザーは資金を瞬時に送金・受取できるという利点があり、スピードと可用性で従来の決済方法を大きく超えています。また即時決済は速いだけでなく、現金のようにATMや銀行に行く必要がなくなるため、非常に利便性の高いものです。オンライン・バンキングを通じた取引の円滑化は、即時決済を金融システムにおける変革的な力として位置づけ、全体的な利便性と効率性を向上します。
  • 費用対効果
    即時決済は、多くの地域で最小またはゼロ・コストで利用できます。手数料が適用される場合でも、従来の金融取引に関連する手数料に比べ、かなりリーズナブルになっています。これは、特に経済的に余裕のない個人にとっては大きな利点です。
  • トップクラスのセキュリティ
    即時決済では、すべての取引がリアルタイムで記録されるため、不正行為の検出・追跡が容易になります。金融取引における安全性と透明性を優先する新規ユーザーにとって、この安全性の向上は、即時決済を特に魅力的なものにしています。

結論として、即時決済は、低コストで安全かつ使いやすい即時送金を可能にし、ユーザーの日常的な金融行動を変える鍵を握っています。また、従来の金融サービスでは提供されることがなかったため、ユーザーの経済に対する全体的な視点を変える上で大きく貢献しています。即時決済は、ユーザー、特に銀行口座を持たない層に経済的安定と将来の成功をもたらす力を与え、経済的エンパワーメントと経済的幸福の新時代の到来を告げるものであると言えるでしょう。

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