既存のオンプレミスインフラを再利用する理由

既存のオンプレミスインフラを再利用する理由

デジタルトランスフォーメーションは、確かにビジネスの未来を変えてきました。情報技術(IT)の分野では、既存のインフラ、技術や管理サービスを利用し、効率的かつコスト効率の高いクラウドネイティブ環境の基盤が構築されつつあります。

初めに、企業のIT環境を運用・管理するために必要な要素であるITインフラストラクチャを定義しましょう。ITインフラストラクチャとはハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク機器、データストレージなどであり、これらの要素はすべてITサービスやソリューションを提供するために使用されます。

本稿では、企業のデータセンターに使用される従来のITインフラを、将来的にハイブリッドクラウドに利用できる最新データセンターの構築に再利用する方法について考えていきます。

クラウドネイティブプラットフォームの導入

レガシーアプリケーションやコンテナ化されたアプリケーションを管理する一般的なオーケストレーションシステムを使用してクラウドネイティブなプラットフォームを構築するには、サーバー、ストレージ、ネットワーキング、オペレーティングシステム、仮想化技術をすべて活用することができます。

HashiCorp NomadやKubernetesは、アプリケーションの導入と管理を大幅に簡素化できることから、これまでにない導入率を達成した最高のクラウドネイティブテクノロジーです。これらを利用すれば、パブリッククラウドを利用できないユーザーでも、「クラウドライクな」環境での運用が可能になります。これは、依存関係のデカップリング(分離)、アプリケーションスタックからのインフラの切り離しによって行われ、クラウドネイティブアプリケーションのポータビリティとスケーラビリティを提供します。

クラウドネイティブプラットフォームを導入すると、以下の共通の機能を利用できます。

  1. 自動スケジューリング:現在の機能に基づくランキングシステムを活用し、アプリケーションを実行するのに適したホストを自動的に検索。
  2. スケーラビリティ:変化する需要に対応するため、必要に応じてITリソースを増減させる機能を提供。
  3. 自動リカバリーと自己修復の導入:様々なツールやメカニズムを提供し、障害発生時にアプリケーションの再起動や、データを回復。
  4. ロールアウトとロールバック戦略:クラウドネイティブプラットフォーム内で大規模なクラスターデプロイメントが管理される際にローリングアップデートがすぐに起動。なお、ReplicaSetsやローリングアップデートは戦略の一例です。
  5. ストレージオーケストレーション:様々なサードパーティプラグインのサポートにより、ステートフルなワークロードを維持するための効率的なストレージオーケストレーションが利用可能。

既存のオンプレミスインフラをどう再利用するか?

既存のオンプレミスインフラをクラウドネイティブプラットフォームに活用することで、現在のアプリケーションとその関連データをローカルでホストされたクラウドベースの環境に最小限の変更で移行することができます。

これは、企業が運用するデータセンター内で「リフト&シフト」の移行戦略を用いることで実現します。アプリケーションは、既存の環境から事実上「リフト(持ち込み)」され、そのままの形で新しいクラウドベースの環境に「シフト(最適化)」されることになります。これにより、将来的に外部のパブリック/プライベートクラウド環境への移行を計画する際に直面する可能性のある問題を最小に抑えることができます。

ハイブリッドクラウドにおける既存のオンプレミスインフラの役割

ハイブリッドクラウドは、テクノロジーシーンにおける主要な差別化要因となってきています。そしてワークロードのホスティングを検討する際には、従来のITインフラが重要な役割を果たします。その一つがメインのワークロードをクラウド上で動作させたまま、ローカルのバックアップサイトとして機能させることができるディザスターリカバリーです。

もうひとつの役割はコストに関連するもので、設定の一部(最も高価な部分)を既存のオンプレミスデータセンターでホストされるように移行することです。これは、送信トラフィックを大量に発生させる特定のサービスはクラウドでは比較的費用がかかりますが、ローカルでホストされたインフラではまったく費用がかからないことがあるためです。

既存のオンプレミスインフラを再利用することのメリット

既存のオンプレミスインフラとクラウドベースの環境との移行では、企業の運用チームが最新のナレッジを得ていることが必要です。既存のインフラがローカルでホストされるクラウドライクな環境で再利用されれば、この種のナレッジの取り込みを大きくサポートし、学習効果を高めます。

また、インフラの再利用により、テストサイト、開発環境、オンボーディング、サンドボックスなどの二次的な暫定プラットフォームの構築が、新しいクラウドライクなインフラを使用して簡単に自動化されます。これにより、暫定プラットフォームや環境の構築と終了を完全に自動化するメカニズムが提供され、運用チームの作業が容易になります。

さらに、既存のレガシーシステムを徐々に移行することで、クラウド基盤の導入・構築だけでなく、運用チームの研修にかかる費用など、実際に発生するコストを実験的に推測することも可能になります。

結論

世界的なパンデミックにより、この2年間でITインフラの管理は完全に様変わりしました。このため、ビジネスのトップやITのリーダーたちは、レジリエンス、セキュリティ、適応性を重視し、新たな課題に取り組んでいます。

インフラストラクチャを管理するための最新のテクノロジーを評価し、導入することで、企業は変化する環境やその要求に容易かつ効率的に対応できるようになるでしょう。

既存のインフラを再利用することは、現時点で最も賢明な経営判断だと言えるのです。

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