紙からピクセルへ: バーレーンの電子小切手の旅

紙からピクセルへ: バーレーンの電子小切手の旅

バーレーン王国は、2021年の世界経済規模ランキングで97位となり、一人当たりのGDPは26,563米ドルとなりました。同国政府は、2030年までの経済成長のビジョンをデジタル・トランスフォーメーション、イノベーション、若者の創造性に焦点を当てて描いています。

バーレーン中央銀行は、中東・北アフリカ地域やその他の地域でも革新的な機関として有名で、これまでも多くの決済システムを導入し、経済サイクルの加速、金融包摂の強化、地域、国際レベルでの金融サービスの向上に成功してきました。

そのうちのひとつが、バーレーンの指定決済機関であるThe BENEFIT Company(BENEFIT)が2012年から運用しているProgressSoftの電子小切手決済システムです。Bahrain Check Truncation System(BCTS)のブランド名で実装されているこのシステムの導入は、それ自体が革命的で、金融機関間の小切手の物理的な動きや取り扱いプロセスを完全に変えてしまおうとするものでした。

しかし、2020年には、国のビジョンやデジタルトランスフォーメーションの目標に合わせて、システムをアップグレードする時期が来ました。そこで、紙ベースの小切手を完全に電子記録化し、手書きの署名から電子署名への置き換えを考えました。このアイデアは、バーレーン中央銀行、BENEFIT、銀行団体の賛同により世界的なサクセスストーリーの始まりとなったのです。

私たちは何年も前から仮想通貨技術の標準に注目しており、1970年代初頭にPKI(Public Key Infrastructure:公開鍵基盤)が導入されて以来、高い成熟度に達していることを認識していました。また、電子証明書とトラストサービス(eIDAS)の規制フレームワークよってサポートされている欧州電気通信標準化機構(ETSI)標準に基づく電子デジタル署名の標準化のアップデートの必要性も感じていました。

そこで、まず小切手の署名をPKI(公開鍵インフラ Public Key Infrastructure)プライベートキーで暗号化、パブリックキーで復号し、新しいバージョンはバーレーン電子チェックシステム(BECS)というブランド名の新システムに搭載することを計画の第一段階と考え、新システムや電子小切手の装置導入のプロセスの検討を開始しました。

ここで前提としたのは、既存のインフラを活用することで導入時の混乱を軽減し、法人・個人を問わずあらゆるエンドユーザーに対応し、使いやすく、ユーザーフレンドリーなユーザー体験を実現するということでした。

その中でも、紙ベースの小切手と完全電子化された小切手を共存させながらこの移行フェーズの管理が簡単にできるようにすることは、最もこのプロジェクトにおける第一歩かつ重要事項の一つでした。

また、電子署名や仮想通貨の革新的なソリューションは、情報電子政府庁(IGA)の管轄であるため、暗号キーの作成、管理、使用に関する基準や標準運用環境のクリアは必須であり、多くの必要項目にクリアするために多大な労力を要しましたが、PKI鍵の管理、電子署名を検証するための法的適合性の高い電子証明書の発行など、さまざまな知識を身につけることができたことは大きな収穫でした。

すべての関係者の多大な努力により、2021年10月にBENEFITで本格的なソリューションの稼動を開始、電子小切手帳の発行、電子小切手の入金、清算など、すべてのタイプの顧客にエンドツーエンドの電子チェックサービスを提供することに成功しました。

このサービスは、証明書の発行、小切手の署名、サービスの提供、さらに重要なこととして、2012年から国内で行われている既存の清算プロセスに電子小切手を組み込むための重要な統合により実現されました。新システムと既存のECCとのシームレスな統合により、銀行のユーザーは、紙ベースの小切手と同じ方法で今まで通り電子小切手の対外・対内清算処理を行うことが可能となりました。また、中央銀行も紙ベースの小切手と同じ方法で清算済みの電子小切手を決済できるようになりました。

また、データ収集、分析、議論、設計、開発、大規模なテスト、多くのトレーニング、さらにはマーケティング活動、法的調査、規制の枠組構築など、膨大な労力の甲斐あって世界的な成功事例となりました:

  • 運用開始初日に6万人以上のユーザーが新規登録を申請
  • 運用開始から1週間で54万人のユーザーをカバー
  • 3ヶ月で46,000社の企業でフルコンプライアンス対応
  • 世界初の国別電子チェックの実施

バーレーンの電子小切手導入は、他の国々に先駆けて私たちが実施し、今後他国での電子小切手導入検討の際にはインスピレーションを与えることとなるであろう革新と成功のケーススタディとなりました。また、私たちの長期的なパートナーであるバーレーン中央銀行とThe BENEFIT Companyには平素より多大なるご協力に感謝申し上げます。

The BENEFIT Companyとの対談をご覧ください。

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